映画『街の灯』
生オケ・シネマ












City Lights (c) Roy Export SAS


<あらすじ>
ひょんなことから盲目の花売り娘(ヴァージニア・チェリル)と出会った浮浪者チャーリー(チャールズ・チャップリン)。娘に想いを寄せる彼は、その晩、自殺を試みた酒豪の富豪(ハリー・マイヤーズ)の命を救う。富豪と親友になったチャーリーは、その立場を利用し、大富豪を装って娘に近づいていく。やがて、娘とその祖母(フローレンス・リー)が家賃を滞納し、立ち退きを命じられている現実を知ったチャーリーは、滞納分の家賃と視力回復の手術代を稼ぐため、八百長ボクシングの試合に挑む……。



監督・製作・脚本・主演・音楽:チャールズ・チャップリン
アメリカ初公開1931年1月、日本初公開1934年1月
生オケ・シネマ 使用映像:チネテカ・ディ・ボローニャ修復による2Kデジタル・リマスター版(スクリーンサイズ 1.17:1)
生オケ・シネマ 使用楽譜:オリジナル・スコアに基づく2004年ティモシー・ブロック復元版
上映時間86分(日本語字幕付、視覚障がい者向け音声ガイドサービスあり)



生オケ・シネマ vol.2
『街の灯』の魅力

●映画が素晴しい!
映画評論家・淀川長治をして「見終わったあと、涙の目のやり場がなくなる映画。(中略)今日までのどの名作のラスト・シーンもこれほどの美しさを見せたものはない」と言わしめた号泣必至の名作が、チャップリン最高傑作の呼び声も高い『街の灯』だ。台詞に頼らず、パントマイムと音楽だけで物語と感情を伝えきるチャップリン芸術の粋。喜劇と悲劇の要素を併せ持ち、残酷なまでに人間の真実を表現した感動的なドラマ。おなじみの浮浪者チャーリーのキャラクターが完成の域に達した『街の灯』は、脚本執筆だけで1年、撮影と編集に2年もの歳月を費やした、チャップリン執念の伝説的作品としても有名だ。キューブリック、タルコフスキー、フェリーニ、ウディ・アレン、オーソン・ウェルズなど、『街の灯』をチャップリンの最高傑作に挙げる映画監督も多い。死ぬ前に必ず見ておきたい映画史上の傑作、それが『街の灯』だ!



●音楽が素晴しい!
チャップリンは、音楽も自分で作曲した!10代の頃からヴァイオリンやチェロの演奏を得意としたチャップリンが、初めて映画全編に音楽をつけ、作曲家としての才能を開花させた記念すべき作品が『街の灯』だ。主人公チャーリーのパントマイムを絶妙に伴奏する、超絶的な音楽ギャグの数々。ヒロインのテーマとして流れてくる、ホセ・パディラ作曲《ラ・ヴィオレテラ(すみれの花売り娘)》の心に染み入るメロディ――。『街の灯』の音楽は、製作当時の録音技術が貧弱だったため、これまで上映・放映されてきたフィルムではチャップリンの作曲意図を充分伝えることができなかった。そこで生オケ・シネマでは、オーケストラが映画全編とシンクロしながら、サントラ録音に使用された楽譜を生演奏し、チャップリンが意図した通りの音楽を再現!今回の演奏で使用されるのは、チャップリン音楽の世界的権威として知られる指揮者ティモシー・ブロックが2004年に復元したスコア。指揮はもちろんブロック自身。『街の灯』の音楽の真の姿が、生オケ・シネマで明らかになる!


指揮者 ティモシー・ブロック
●映像が素晴しい! 
生オケ・シネマ『街の灯』は映像も素晴らしい!80年前の映画とは思えないほど鮮明なデジタル・リマスター版『街の灯』が、巨大スクリーン上に映写されるのだ。今回、使用される映像素材は、名作映画修復のメッカとして知られる伊「チネテカ・ディ・ボローニャ」が修復した2Kデジタル・リマスター版。「チネテカ・ディ・ボローニャ」は1998年よりチャップリン財団の依頼を受け、チャップリンの主要作品を修復する「チャップリン・プロジェクト」を開始。フィルムの傷や歪みを取り除く丹念な修復作業によって、『街の灯』を含む名作の数々を現代に甦らせ、世界中の映画ファンを唸らせた。しかも今回は、幅10mを超える巨大スクリーンを特設し、かつてない鮮やかさと迫力で『街の灯』の上映を実現!最高の演奏と最高の映像で体験する、チャップリンの最高傑作『街の灯』を見逃すな!



文:前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)