●カナダのケルト文化圏、ノヴァ・スコシア州ケープ・ブレトン島
この秋から冬にかけて、カナダのケルト文化圏、ケープ・ブレトン出身ミュージシャンの作品が、次々リリースされます。
ケープ・ブレトンは、カナダ、ノヴァ・スコシア州の北東部に位置。6500平方キロメートルの島には手付かずの自然が溢れ、1998年には「世界で最も景色の美しい島」に選ばれています。
1600年代にスコットランド移民が多く移り住み、ケルト文化が伝えられました。
他のケルト圏と同じように、ケープ・ブレトンも音楽が生活に密着しており、フィドルやピアノの調べに合わせ、ゲール語で歌い、キッチンやリビングでステップ・ダンスに踊りあけくれる「キッチン・パーティ」が有名です。これらが結びつき、”踊りながら弾くフィドル奏者”がたくさん生まれています。フィドルの音色はアイルランドのものとはひと味違って、主張が強く無骨でごりごり。また、ピアノが使用され(アイリッシュ・トラッドではあまり使われない)小気味良いリズムを刻むのも特徴です。
この機会にカナダのケルト音楽を聴いてみよう!
*アシュレイ・マックアイザック
『アシュレイ・マックアイザック』(UCCL-1071)発売中
ご存じ“パンク・フィドラー”の異名をとるアシュレイの久々の国内盤。ここ最近は純粋なトラッド・アルバムを出していたが、またまたトラッド+ロック+ヒップホップ+…のミクスチャー路線を展開。聴けばすぐに分かるぶっ飛びジミヘン・フィドルは健在。
*ナタリー・マクマスタ−
『ブループリント』(VICP-62488)発売中
『イン・マイ・ハンズ』(VICP-62489)発売中
実力派の美人フィドラー。『ブループリント』は6作目にあたる最新作。ケルトと米カントリー/ブルーグラスの融合がコンセプトで、ベラ・フレック、ジェリー・ダグラスなど米カントリー/ブルーグラス・シーンの実力者が多数参加。白熱した熱い演奏を聴かせます。コンテポラリー音楽との融合試みた前作『イン・マイ・ハンズ』(5th)も同時リリース。どちらも超一級のフィドルがたっぷりと聴けます。
*ザ・コッターズ
『メイド・イン・ケープ・ブレトン』(VICP-62475)発売中
2002年2月のレコーディング当時、メンバー4人の年齢は何と14歳、13歳、12歳、11歳。初々しい演奏の随所に光るところがあり、透明感溢れる可愛いヴォーカルも◎、聴かせてくれます。今後に期待大の超若手グループ。
*スロンチャ・ヴァー
『VA』(VICP-62525)11/21発売
ケープブレトンの5人組新人バンド。フィドル、ボーラン、パイプなどにドラム、ベースなどを加え、ケルティック・ロックともいうべきサウンドを聴かせる。バンド名は英語で「good
health to you」を意味する。BBCのFolk Awardにノミネートされた。
●「ケルティック・カラーズ・フェスティバル」
ケープ・ブレトンで毎年行われているケルト音楽の祭典が「ケルティック・カラーズ・フェスティバル」。今年は、10月10日の前夜祭から18日まで開催されました。世界各地のケルト圏から300名以上のアーティストが参加し、島内に点在するホールからクラブまで30の会場に分かれて、コンサートのみならず、ダンス、ワークショップなども行われました。
*この大フェスティバルには、我らがカルロス・ヌニェスも出演。様子を伝えるマネージャーからのメールは次のようなものでした。
Carlos in Canada last weekend
One of the many highlights of the night - which included three
standing ovations throughout the show - was the closing number
when Carlos Nunez invited first Natalie MacMaster and then pipers
Matt MacIsaac from Natalie's band and Cillian Vallely from Lunasa
and then the Fiddlers Association, the dancers and tireless square
dance aficionado Burton MacIntyre back on stage for a huge finale.
The calibre of the production left many in the audience commenting
that this year's opening was the best in seven years.
Day Two also saw the late night Festival Club swing into high
gear with a smoking performance by Be詫ach and the ever-generous
Carlos Nunez sharing the stage with Boisdale fiddler Joe Peter
MacLean.
▼www.celtic-colours.com
*以下、観に行かれた方から寄せられたレポートをご紹介します。
カルロス・ヌニェスを、カナダのケープ・ブルトンで見てきました。現地での様子をお伝えします。
ケルティック・カラーズ・フェスティバルは今回が7回目。私にとっては連続4回目のケープ・ブルトンとなりました。10月10日のオープニング・ガラ・コンサートのトリを務めたのがカルロスでした。
地元ケープ・ブルトン・フィドラーズ・アソシエーションの老若男女100人は軽く超えるフィドルの大合奏で幕を開け、今年のアーチスト・イン・レジデンスに選ばれた、スコットランドのゲーリック・シンガー、マリー・マッギネスと地元のマルチインストゥルメンタリスト、デイブ・マックアイザックが登場。続いてアイルランドからあのルナサがケープ・ブルトンに初登場。熱い演奏で、観客も一気にヒートアップ。しっかり人々の心をつかんだ様子。
続いてはケープ・ブルトンの宝石(カルロスに言わせるとプリンセス)、ナタリー・マクマスター。新作ブループリント(日本盤が出たのですね!)で聴けるような、派手にショーアップされたパフォーマンスで、ステージ狭しと、フィドルをかき鳴らしながらのステップダンスを見せてくれる。ほんと、華があります彼女。
ステージのセットアップの合間に、アイリッシュが多いお隣の島、ニューファンドランドから来た5人組クラウド・オブ・ボールド・シェアマンが、素晴らしいアカペラのコーラスを聞かせる。
そして最後が、純白の衣装に身を包んだカルロス。実はケープ・ブルトンは彼にとっては去年に続いて、2回目の登場。しかし去年は他のメンバーがヴィザのトラブルで入国できなかったとかで、弟ショルショと二人だけのステージになってしまい、彼にとっては不本意なものだったと思うのです。その二人だけのステージで「今悲しいニュースを聞いた。チーフタンズのデレク・ベルが亡くなった。この曲は彼に捧げたい。」と言って、Woman
in Irelandを奏でたことは私にとっても忘れがたい出来事だった。日本で始めてカルロスに遭遇したのは、当然チーフタンズのゲストとして出てきた時だったのですから、何か因縁めいたものが感じられました。
そんな去年のいきさつもあってか、観衆は彼の再訪を暖かく迎え、3000人を超える場内がカルロスマジックに操られ、大いに盛り上がる。彼の美しい演奏と、ショーマンシップぶりに、皆が至福のひと時を共有した。
フィナーレは、カルロスの号令のもと、今夜のアーティストを全員ステージに招いて、ボウを動かすスペースもないくらいの、中でのケープ・ブルトン・チューンの大合奏。その中に笑顔のルナサや、ナタリーがいる。賓客の招待席にいた、女王陛下の代理である、レフテナント・ガバナー・オブ・ノヴァ・スコシアまでが、手を取り合って最前列でスクエアダンスを踊り出す。こんなの日本で考えられますか。天皇や首相の代理がいきなり場内で踊り出すなんて。
興奮冷めやらないなか、深夜のお楽しみ、フェスティバル・クラブへ向かう。そこではなんと、ステージを終えて寛ぎ、一般人に混じって、おいしいとは言い難いクラブのピザなんかをほおばるカルロスに遭遇。私の隣のテーブルに座ったのです。誰もサインをもらいに行ったりする人もいないし、かなり躊躇しながらも、食事が一段落した頃を見計らって、思い切って声をかけてみた。日本から来たんだよ、というとさすがに驚いた様子。12月の東京での再会を告げて、五線譜仕立ての素敵なサインをもらって、写真にも快く応じてくれた。いきなり初日からこんな幸運があっていいのか。しかしほんとに、あちらの人はみんな滅多やたらにサインをねだったりしないので、日本人が奇妙に思われるのも無理もないかも。
私は残念ながら見逃したものの、カルロス、翌日のフェスティバル・クラブでは、キリアン・ヴァレリーと地元大物フィドラー、キノン・ビートンと即席グループを結成したとか。見たかったなあ。
三日目の昼の公式コンサート、Piper's Ceilidh。地元若手パイパーの演奏に続いて、ルナサのキリアン・ヴァレリーがソロで登場。3番手のカルロスは、出発の時間が迫っていたようで、ちょっと慌しいながらも、最後まで変わらぬ笑顔を振りまいていました。さよならカルロス、次は東京だね。
以上、カルロスに関するネタを中心にまとめました。フェスティバルは9日間に渡って繰り広げられましたが。もっとも、最終日は当方帰国の途についていたので、報告するすべもありませんが。 (澤田幸江)
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