ケルティック・クリスマス2025最終公演は所沢市民文化会館ミューズ・アークホール。ホワイエでは開演の2時間以上前からギネスビールやフィッシュ&チップス、アイルランドの様々な物品が販売されるケルト市を開催。特設ステージでは、日本のケルト音楽バンドやアイリッシュダンスチームによるパフォーマンス、さらにクレア・サンズのフィドルワークショップ、キャラ・バトラーのアイリッシュダンスワークショップも行われて、多数の観客が参加。公演前から会場の空気はケルト一色に。
本編が開演、最初に登場したのは前夜のすみだ同様リアム・オ・メンリィ。ピアノを軽く弾きながら「ムー」と低音の静かなハミング。観客にも同じ音を求め、ホール全体がその音で包まれる中、語るように歌い始めたのは『スタンド・ビサイド・ミー』。観客のハミングが続く中、リアムの歌声は次第に熱を帯びていき、パワフルにソウルフルに歌い上げる。一曲目から本領発揮、絶好調。
フィドルでもギターでも素晴らしい演奏を聴かせるクレア・サンズとのデュオでは、クレアの透明感のある高音の美しい歌声と、リアムの低音が絶妙のハーモニーを聴かせる。クレアが覚えた片言の日本語で観客に「ガンバレ、ガンバレ!」と語りかけると、リアムが立ち上がって相撲の四股を踏む仕草を見せて、会場は大ウケに。
バウロンの演奏と歌だけで聴かせる曲や、ステップクルーのダンスも加わって、終わってみれば前夜とは異なる曲目、曲順に。これもまたリアムならでは。
続いての登場はザ・ステップクルーTop3 with ダン・ステイシー。ダン・ステイシーとジョン・ピラツキのフィドルデュオに乗ってキャラ・バトラーが素晴らしいステップで踊る。ジョンが日本語で挨拶と曲紹介、チーフタンズとパディ・モロニーに捧げる『アイルランドの女たち』。さらに4人でワイルドな超熱いステップダンスを繰り広げ「メリー・クリスマス!」と全員でお祝い。
休憩を挟んで、シャロン・シャノン登場。『ダディズ・ジグ』が始まった瞬間、メロディの音一つ一つが楽しさを運んできて、観客の誰もが自然に笑顔になっていく。これがまさにシャロンの音楽の最大の魅力なのだ。
レハールの『メリー・ウィドー』のワルツでは、優雅なメロディに乗せてリアムとキャラが舞台上に登場してワルツを踊る。前夜の墨田ではこの場面で下駄を履いて踊っていたリアムだが、今日は裸足で踊っていた!
『ムーンダンス』からピアノでリアムも参加。昔からシャロンをよく知るリアムだけに、シャロンの歌うように演奏されるアコーディオンのメロディを生かすように、美しい対旋律やハーモニーを聴かせていく音のサポートが見事で、とても心地よい。
今回のケルクリは、各アーティストの演奏に他のアーティストも加わるセッションのシーンがとても多く、その驚きや楽しさが公演を素晴らしいものにしてくれた。
アンコールは、シャロン、リアム、ステップクルー、クレアに加えて、KOZO TOYOTA FLAT QUARTETも参加しての大セッションに。『ゴールウェイ・ガール』では観客も一緒に大合唱。ケルト音楽の魅力と楽しさを十二分に伝えた2025年のケルクリは、観客からの拍手と大歓声の中で無事終演となった。
だがしかし、所沢のケルクリはこれでは終わらない。むしろここからが、本当の所沢のケルクリの始まりだ。ホワイエいっぱいに並べられた椅子に、観客が次々に座っていく。2階へと続くループ状の通路も立ち見で満員。椅子席の人は次々に自分の楽器を取り出しスタンバイ。セッション・パーティ、出演したアーティストと楽器を持ってきた人全員が一緒に演奏を楽しむ時間の始まりだ。
リアムはティンホイッスルをホテルに忘れてきたため、ケルト市で売っていたものを購入して着席。リアムが演奏を始めると、楽器を持ってきた人全員が一斉にその曲を演奏する。その人数は100人を超え、すごい迫力だ。
シャロン、ダン、ジョン、クレア、一曲終わると次の人が自分の好きな旋律を弾き始めると、瞬時に全員が反応してその曲を演奏していく。キャラ、ネイサン、日本のアイリッシュダンサーたちも、それに合わせて中央の仮設ステージに上がってダンスを披露。
ついさっき、ケルクリ本公演を終えたばかりだというのに、リアムやシャロン、出演アーティストたちの元気なこと! 音楽を演奏することはまさに日常で、彼らの生きるエネルギーとなっていることを強く感じさせる。
次々に演奏が続く中、予定の時間を大幅に過ぎて残念ながらセッション・パーティは終了。でもリアム、シャロン、ほかのアーティストたち、演奏やダンスに参加した日本のプロ、アマチュア、たくさんの人たち誰もが、心から音楽を楽しんだ、満足そうな笑顔を見せていた。2025年も心に残る素晴らしいフィナーレを迎えたケルティック・クリスマス。楽しさにあふれたこのセッション・パーティは音楽好きなら体験する価値は十分あり。まだ体験されたことのない方は、ぜひ2026年は所沢へ!