メンバー
Marcel Loeffler(accordion)
Cedric Loeffler(guitar)
Joselito Loeffler(guitar)
Jorgui Loeffler(guitar)
Gautier Lauren(contrabass)
マルセル・ロフラー
フランス・アルザス地方出身の、盲目のマヌーシュ(ジプシー)アコーディオニスト。ダンス楽団のギタリストを父にもち、5才のときからアコーディオンを演奏するようになった。人からまったく教わることなく、連日連夜好きなアコーディオン奏者をコピーすることで明け暮れ、やがてエレクトリック・ベースや電子鍵盤楽器もマスター。アコーディオン・スウィングの巨人ギュス・ヴィズールやアート・ヴァン・ダームに憧れる一方で、ジャズ・フュージョンの洗礼も受け、ハービー・ハンコックとチック・コリアに強烈に影響されている。18才のときにマンディーノ・ラインハルトと出会い、ノート・マヌーシュをはじめとするジャズ・マヌーシュ分野での音楽活動を共にするようになる。ソロアルバムとしては「VAGO」(1996)、「SESSIONS」(2002)を発表している。
今回来日のメンバーはマルセルの親族中心で、セドリックは息子、ジョセリートが弟、ヨルギーは従兄弟にあたる。ジョセリートとゴーティエ(ベース)は、ノート・マヌーシュのメンバーでもある。
マルセル・ロフラーとノート・マヌーシュ
ノート・マヌーシュというグループを語る上で忘れてはならないのが、盲目のマヌーシュ・アコーディオン奏者マルセル・ロフラーの存在だ。彼の存在がノート・マヌーシュに、単なるマヌーシュ・スウィングという枠に留まらない幅広い音楽性を与えている。ヴァルス(ワルツ)の曲で聴かせる揺れるようなミュゼットの響き、ジャンゴ直系のスウィング曲ではマンディーノと軽快なソロ・プレイのキャッチ・ボールで魅せ、そしてピアソラを彷佛とさせるイマジネーション溢れるソロまで聴ける。どちらかといえばストイックでモノトーンな雰囲気が漂うマヌーシュ・スウィングのアルバムが多い中、マンディーノとマルセル、ギターとアコーディオンという組み合わせが、こんなにもカラフルで楽しいアンサンブルをつくり出すとは! その秘密を解く鍵は、彼等が唯一カヴァーした曲のオリジナル奏者であるギュス・ヴィズールにありそうだ。
ギュスは1930年代から50年代にかけて、ミュゼットにジャズのスウィング感を持ち込み、スウィング・ミュゼットの王様として、その後のアコーディオン奏者に大きな影響を残した。アコーディオン界のジャンゴと言えるかも知れない。現在でも積極的にジャズ・ミュージシャンと共演を続けているマルセル・アゾーラや日本でも人気の高いリシャール・ガリアーノらもギュス直系のミュージシャンたちだ。
このアルバムのサウンドに決定的な色彩を与えているマルセルは、ギュスがそうだったように、ジャズからたくさんのインスピレーションを受けている。しかし決してジャズに縛られていはいない。むしろジャズとダンスでも楽しむかのような自由な感覚が嬉しい。彼等の偉大なる先達ジャンゴも、一つのスタイルに安住することなく、様々なミュージシャンたちとセッションを繰り返していたことを思い出す。ジャンゴの魂はマヌーシュのギタリストたちだけでなく、マルセルのようなアコーディオン奏者の心にも宿っているのだ。 海老原政彦
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