CAST & STAFF

監督/ラルフ・マルシャレック
Ralf Marschalleck

人を酔わせるジプシー・ブラスバンド
この出会いによって我々の人生は変わる

17歳の時、『ジプシーは空にきえる』というロシア映画を観たのが、ジプシー文化との運命的な出会いとなった。この情熱と野性味に溢れ、魂をゆさぶる音楽に彩られたメロドラマ調のラブストーリーを観て、ジプシー特有の精神世界に根ざした、彼らの人生にはせる情感に深い感動をおぼえた私は、手当たり次第にジプシー音楽のレコードを集めはじめ、ジプシー関係の本を読みあさり、親しい友人とジプシーの祝祭行事を祝ったりもした。早い話が、私はジプシーの文化に恋してしまったのである。
私はかなり夢見がちなティーンエイジャーだったと言わねばなるまい。
その熱い思いはいつまでも消えることはなかったので、いつか本物のジプシーたちに会える日が来ると確信してはいたが、その方法はまだ思いつかなかった。
30年が過ぎ、映画製作を初めてからずい分たった頃、友人たちにあるアイディアがひらめいた。俗っぽいレストランでテーブルに回ってくる、いかにもな代物とは似ても似つかぬ、本物のジプシー音楽を求めて、ルーマニアをさまよってみないか?それを聞いたとたん心の奥底から私の初恋がよみがえってきた。変わり者の友人一行に加わることにして、小さなビデオカメラをかついで出かけると、ほどなくルーマニア東部、モルドヴァの村々に今もジプシー文化が息づいていることが分かった。それが本作の冒頭にあたるのだが、この発見が後にどんな幸運な結末につながってゆくのか、思わず身体が踊り出し、人を酔わせるジプシー・ブラスバンドの演奏が、どれほど全世界を熱狂させることになるのか、当時の私たちには想像もつかなかったのである。ただ分かっていたのは、我々の夢が実現しつつあること、そしてこの出会いによって我々の人生は変わるであろうということだけだった。
 というわけで、この映画では3つのラブストーリーが展開する。まず情熱に捧げる愛、それからドイツの男たちとジプシーの娘たちをつなぐ愛、最後に世界中の人々の、心を打つ音楽に対する狂おしいまでの愛。
 それが異文化交流の原点ともいうべきものであり、今この世界が必要としているものではないだろうか。


1953年、旧東ドイツのワイマールに生まれる。1980年、イエーナ大学で心理学修士号取得。アマチュアとして、実験映画、ドキュメンタリー、短編などを製作する。1981-87年、助監督として経験を積み、1987年より映画監督として活躍。東西ドイツ統合後、1991年にインディペンデントの映画会社ウン・ヴェルト・フィルム・プロダクションを共同設立し、東ドイツ時代の秘密警察<シュタージ>を描いたドキュメンタリーを監督・製作し、話題を呼んだ。同年、チューリンゲン映画基金の共同設立者および会長となる。
これまでに長編4本、短編25本(すべてドキュメンタリー)を発表。主な作品に『Entiassen』(1989-93)、『Gebrochen Deutsch』(1991)、『Fremd-Verkehr』(1992)、『Daniel und die Geister der Mahkah』(1994)、『Cola und Kanu-Indianer am Cape Flattery』(1995)、『Lichtspieltraum』(1995)、『Zwei Madchen aus der Walachei』(1997)、『Makah - Die den Wal Fangen』(1998-99)。


出演・音楽/
ファンファーレ・チォカリーア

FANFARE CIOCARLIA

世界が夢中!ぶっとびブラス!!

ルーマニア北東部の小村ゼチェ・プラジーニ在住のジプシー・ブラスバンド。映画『アンダーグラウンド』『黒猫・白猫』でお馴染みのバルカン伝統曲や世界の大衆・映画音楽を猛スピードで演奏し、数あるジプシー・ブラスバンドの中でも世界最高の実力と人気を誇る。トランペット、サックス、チューバ、ホルン、クリネット、ホルン、太鼓、パーカッションら28歳から64歳までの12名編成(撮影当時)。プロジェクトによりジプシーダンサーが加わる。
元々は冠婚葬祭などでの演奏するブラスバンドだったが、1996年に彼らの現マネージャー、ヘンリー・アルンストがルーマニアのミュージシャンの村を旅している時に発見され、結成される。1997年春、チォカリーアはドイツ、フランスで最初のツアーを行い、成功を収める。1998年にはファースト・アルバム『ラジオ・パシュカニ』("German Award of Record Critics"を受賞)を発表し、34カ国・4大陸のツアーを敢行。瞬く間に世界中で大人気を獲得する。以降、年に120〜140本ものワールド・ツアーを精力的に行い、行く先々で熱狂的な歓迎を受けている。
2000年夏に初来日(この映画に収録されている映像は2000年来日時のもの)、2004年、2005年、2008年と来日の度に観客を増やしている。

メンバー
Costica Trifan :lead trumpet, vocal
Radulescu Lazar :trumpet, vocal
Pancirel Constandache :trumpet
Oprica Ivancea :soprano clarinet, alto sax
Ioan Ivancea :soprano clarinet
Daniel Ivancea: alto :sax
Constantin Cantea :tuba
Monel Trifan :tuba
Constantin Calin :tenor horn, vocal, dance
Laurentiu Ivancea :baritone horn
Costel Ursu :large drum
Nicolae Ionita :percussion
Aurelia Sandu :dance

ディスコグラフィ
クイーンズ&キングス〜ワイルドで行こう』(2007)
『ギリ・ガラブディ』
『イアグ・バリ〜炎のジプシーブラス サウンドトラック』(2004)
『バロ・ビアオ』(1999)
『ラジオ・パシュカニ』(1998)

ファンファーレ・チォカリーアについての詳細はこちら


★もしルーマニアでオリンピックが開催されることになったら、新競技にブラスバンドが登場するかもしれない。そう思わせるほど、彼らの音楽の疾走感は並はずれたものだ。
 ピーター・バラカン(朝日新聞2000年8/30夕刊)
★尋常ならざるエネルギーにみち、しかもききての胸をぐりぐりとえぐる強烈な情感をもそなえた音楽。
 黒田恭一(サライ1999年7/1号)
★彼らの音楽の特徴をひとことで要約すれば、おやじの哀愁と熱気。
 北中正和(毎日新聞2000年8/19夕刊)