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これまでファンファーレ・チォカリーアが来日する度に、彼らを撮り続けた
石田昌隆さんがご自身が撮影した写真と共にF・チォカリーアを語ってくれました。
2000年8月(初来日) 渋谷VUENOS
2000年は、ジプシー音楽にガツンとやられた年だ。5月にタラフ・ドゥ・ハイドゥークス、8月にファンファーレ・チォカリーアが初来日公演を行なったのだった。
これは、8月26日に渋谷VUENOSで撮影したファンファーレ・チォカリーアの集合写真。後列右から4人めのクラリネットを持っている人が、当時のリーダー、イオン・イヴァンチャだ。
ファンファーレ・チォカリーアは、ルーマニア北東部、モルドバに近いゼチェ・プラジーニ村からやってきたジプシー・ブラスのバンド。バルカン半島のジプシー・ブラスは、セルビア南部から北マケドニアにかけての一帯に数多く存在する。ファンファーレ・チォカリーアのゼチェ・プラジーニ村は、じつは日本から遠いという以前に、バルカン半島のジプシー・ブラスが多い地域からも遠く離れた小さな村で、独自の進化を遂げていた。
彼らが世に出るきっかけを作ったのは、ドイツ人のヘンリーという人だ。外部の人にはまったく知られていなかったゼチェ・プラジーニ村にヘンリーが偶然たどり着いて、イオン・イヴァンチャに出会ったのは96年のことだった。当時、ゼチェ・プラジーニの楽師たちは、結婚式などに呼ばれて演奏することを生業としていた。彼らの音楽に魅せられたヘンリーは、もうひとりのドイツ人、ヘルムートも仲間に引き入れ、CDを制作して、西欧でのコンサートをブッキングするために奔走した。そしてついに日本までやってきたのがこのとき。“発見”されてからまだ4年めだったのだ。
2004年8月 すみだトリフォにーホール
初来日の時は、じつは彼らがどういう人なのかよく判らないまま、これはすごいと盛り上がっていた。「ミシトー(Misito 良い)」、「バフタロー(Baxtalo ラッキー。ハッピー。乾杯)」と、これしか知らないロマニ(ジプシーの言葉)で大騒ぎしていた。
彼らがどういう人なのか理解できたのは、ドキュメンタリー映画『炎のジプシーブラス 地図にない村から』(02年)を見たときだ。ここに、ゼチェ・プラジーニ村が描かれ、2000年の初来日公演までの道のりが記録されていた。
これは2度めの来日公演。2004年8月28日、トランス・ヨーロッパ・フェスで来たときに、すみだトリフォニーホールで撮影した写真。ダンサーのアウレリアは、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのニコラエ・ネアクシュの孫娘である。
2005年10月 彩の国さいたま芸術劇場
3度めの来日公演。2005年10月9日、彩の国さいたま芸術劇場で撮影した。背景に掲げられている絵は、スズキコージによるもの。
映画『ジプシー・キャラバン』(08年)は、インドのマハラジャ、ルーマニアのタラフ・ドゥ・ハイドゥークスとファンファーレ・チォカリーア、マケドニアのエスマ、スペインのアントニオ・エル・ピパ・フラメンコ・アンサンブルをパッケージして、6週間におよぶ北米ツアーが行なわれたときのドキュメントだが、ここに、楽屋でチャウシェスク時代には工場で働かされたが、そのころでも週末には結婚式で演奏していたと回想してから「これがホーラのリズムだ」と言って演奏を始めるファンファーレ・チォカリーアの映像が出てくる。
2014年7月 フジロック・フェスティバル2014
ファンファーレ・チォカリーアは、世界中のフェスに出演している。ロック・バンドなどに混じってファンファーレ・チォカリーアが出てくるとイヴェントが締まる。そういうとき「世界最速最強」というのが謳い文句だ。ファンファーレ・チォカリーアは、トルコから伝わったリズムを、自分たちのルーツに根ざしたビートに置き換えて演奏している。具体的には、マネア(Manea)、ホーラ(Hora)、シルバ(Sirba)など。ユーチューブで「Fanfare Ciocărlia」にこれらのリズム名をつけて検索すれば聴くことができる。最新作『火星へGO!』(16年)もホーラの曲から始まる。ファンファーレ・チォカリーアは、バルカン半島の他の地域のジプシー・ブラスとは違って、変拍子の曲がほとんどない。それが、スカに馴染んでいるロック好きの人が入り込みやすいところでもあるのだろう。これは2014年7月26日、フジロック・フェスティヴァル、オレンジコートで。ちょー盛り上がった。
2014年7月 フジロック・フェスティバル2014
ファンファーレ・チォカリーアは、ステージでの終演後、客席や通路で演奏する。これは毎度のことなので、7月の来日公演でも絶対やるはず。ますます絶好調のようなので楽しみだ。
石田昌隆(写真家/音楽ライター)
ジャズ・ワールドビート 2019
ファンファーレ・チォカリーア 来日公演2019
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