来日メンバー
Cristina Branco, vocal
Custodio Castelo, Portuguese guitar
Alexandre Silva, guitar
Fernando Maia, acoustic bass guitar
クリスティーナ・ブランコ
カティア・ゲレイロやマリーザなど若き才能が注目を集める今日のファド・シンガー達の中でも、クリスティーナ・ブランコは一際輝いている。彼女の歌声はマドレデウスのテレーザを思わせる様な初々しくスウィートな歌声。しかし意識的にファドから半歩離れているテレーザとは対照的にクリスティーナの音楽は基本的にはオーソドックスなファドの文脈を確実に受け継ぐもので、そして同時に今日的な新鮮さに満ちているのだ。名手クストディオ・カスティロの澄みきったポルトガル・ギターを中心としたギター類だけのアコースティック・サウンドをバックにして彼女は完璧なヴォイスのコントロールで新旧の歌を綴っていく。
1972年生まれの彼女はリスボン北方のリヴァテージョ地区の出身。そこは伝統的なファドの舞台であるリスボンの下町の文化圏から離れた場所であり、世代的にも彼女は最初はジャズやブルース、フォーク、ボサノバなどファド以外の多くの音楽を愛好していたという。そしてアマリア・ロドリゲスのレコードでファドに開眼する。ユニークな事に彼女はオランダの地でプロとしての活動を開始。デビュー作のライヴ盤『IN
HOLLAND』(1988)が大きな評判を呼び、『MURMURIOUS』(1999)、『POST-SCRIPTUM 』(2000)と2、3作目のアルバムを発表。この2作ともフランスでワールドミュージックのディスク大賞を受賞して更に大きな注目を集める事になった。
確かに彼女の音楽には、ラテン世界だけでなくより広いリスナーにもアピールする透明感と知的な抑揚の妙がある。以上のアルバムは独立レーベルからのリリースだったが、続いて彼女はメジャーのユニバーサル・レコードから『夢を追う人』(2000)と『Corpo
iluminado 』(2001)とを発表。前者は20世紀初頭のオランダの詩人スラウェルホッフの詩をポルトガル語のファドとして歌うというユニークな試みで詩を重視する彼女の姿勢と、既存の枠に収まり切らない冒険精神がよく現れている。2003年には知的な大人の歌として完成した世界の『センスス〜感じて』を発表。そして2004年
6月には待望の初来日を果たして、各地で熱い支持を集めた事は記憶に新しい。この2005年には、待望の最新作『ユリシーズ』を発表。歌の純度をなお一層磨き上げた素晴らしい作品である。その新作発表直後の今回の日本公演は、ポピュラー・ヴォーカル・ファンにとっても、ファド・ファンにとってもまさに必聴なのだ。
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